先日、エンジンを載せた156GTA
お客さんには修理完了のメールをして、納車の予定を打ち合わせておりました。
ただこの時に既に1-6速にはストレスなくギアが入るのにリバースだけはとても入りづらく
それでもミッションオイルが温まればどうにかなるかとあまり深く考えませんでした
ところが翌日、Eくんから電話が来て、工場から出そうと思ったらバックには入らないし、なにより本当に少ししか動きませんぜと
茫然自失で電話をつないだまま絶句してしまいました。
午後からEくんの元に行くと、156GTAはエンジンをかけると僅かながら走るのです。
わずかに走るという事はクラッチは繋がり、トランスミッションのメインシャフトはクラッチディスクのスプラインにしっかり入っているという事です。
調べる限りクラッチセットの品番も合っていますし、どこにも問題はありません
何よりリバースにものすごく入りにくい、しかしギア鳴きはしないところから、中古ミッションが悪いとしか思えないと踏んで、再びエンジンを降ろして作業することにしました。
ここまで一生懸命作業したのに....
Eくんの「楽しんで作業しましょう」にどれだけ助けられたことか
バンパーやライトを外して
ちなみに作業に踏み切るのに約1週間かかりました。
アルファロメオは、特にV6は本国ではハイエンドに位置する為か 本当に整備のしにくいクルマです。
カロッツエリアなど分業によって自動車を効率よく製造する自動車製造文化のせいか、先日の166のリアサスもそうでしたが、大きなコンポーネントごとを完成させた状態で自動車を造るためか 異様なまでに整備性が悪いです。
リアのショックアブソーバーを交換するために、リアサスメンバーを外すなんて馬鹿げた構造はあまり他のメーカーでは見ません
ラジエーターを外す為には抱き合わせで取り付けてあるクーラーコンデンサーを外します。クーラーコンデンサーのビスを外すにはバンパーを外さないといけません
当然外す部品は多岐に及び、当然作業量が多くなるのでどうしても費用が掛かりがちになります
上側の外すものはほとんどなくなりました
下回りはクロスメンバーを外しますが、ここでも製造時にASSYで組み立てた弊害が起こります
画像の左が車両後方、見えているのは遮熱板で、その遮熱板の上のパネルはサイドブレーキやギアシフトが止めてある車内側のプレートです。その下側にクロスメンバーが入り込んでいるので、全部外ボルトをハズさないとクロスメンバーを外すことができません
こうすればわかりやすいかな? 左側のプレートの下に1本ボルトが入っているのです
そして使用するソケットも手前のボルトは15mm、メインでメンバーを止めているボルトは18mm、画像奥のステアリングラックを止めているボルトは21mmと様々なサイズのボルトやナットがランダムに出てきます。
そしてこのおまぬけな位置にあるブレーキキャリパーの固定ボルト
せっかくボルトを回すための切り欠きがあるのに、はす向かいをブレーキパイプが横切るためにソケットが入りません。
こういったボルトはスパナでちょっとちょっと回すので作業者から集中力や体力を奪うのです
エンジンマウントを外すのも上側の24mmのボルトも狭くて駆動工具が入りません。
一通り外したらメンバーを外します。
この上なく重いのでここから画像は少し飛びます
クロスメンバーを外すと一気にエンジンの位置が不安定になりますから、一気に作業を進めます
再びエンジンが地上に降りました。前回と違い今回はトランスミションを入れ替えるだけなので、この場で取り換えて元に戻す突貫工事です
画像の手前側、エンジン後ろ側に見えるのがエキゾーストマニホールド一体型のキャタライザーです。
これはユーロ3の対応車でV6は全てこの型です、これによりエキゾーストサウンドが悪くなったという人がいるくらいのものです
問題はこのエキマニの下にトランスミッションとエンジンブロックをつなぐボルトそのものはありませんが、スターターモーターがあります
エキマニを外しただけでは足らずに、外した下にはスターターモーターが鎮座します。
今回モーターを交換している背景はこのような場所はまず外す事ができないので、エンジンが地上にある時に全て交換してしまうのがセオリーなわけです。なにしろエキマニのすぐ下ですからすさまじい高温にいつもさらされているのですから、何時壊れても不思議ではないのです
しかしこのモーターの取付ボルトはこのようにエンジンが単体なときでも外すのが大変です。
車上で作業することは絶対不可能だと思います
外れました。リングギアが丸見えになります
トランスミッションの新旧を見ます。
特段、悪いところは見えません。しかしここは新しい中古を付けて元に戻します
今回、付き合いのある中古部品販売店だから、事後の不良による返品がききますが、ヤフオクなどで粗悪な部品を売られたら こうはいきません。中古部品の恐ろしいところはもし壊れていた場合の責任の所在です。
再びクラッチを組付けます
ここからはDay2です。再びチェーンブロックで釣り上げて車上に戻します
再び、全く余談の許さない状況が続くので画像が無くなります
ちょうど配達に来た日産部品のM澤さんにも手伝ってもらい、取り付けが少し楽にできました
なにしろパワーステアリングフルードやミッションオイルのクーラーなどが邪魔をして載せるのが難しいのです
さらにDay3になるとEくんがほとんど組みあげてくれていたので作業もスムーズです
もう今度は大丈夫でしょうと軽い動作テストを経て組付けました。リバースも軽々入ります。
アクセルを踏んでシャフトが回転するのも見届けます
やっと出来上がった156GTA。本当にお疲れ様でした。
短期間に2度もエンジンを降ろすハメになるなんて本当につらい日々でした
でも心はすがすがしいまでの達成感で満ちていました。
まー、2度あることは3度ある?
そんなことありませんよ(笑)
と、笑っていたのもつかの間でした...
次回に続く